プレッシャーへの対応:デジタルカスタマーエンゲージメントにおけるローカリゼーションの重要な役割

Camille Avila 2023年3月27日 読了目安時間:6分
ギリシャの哲学者ヘラクレイトスは、「人生で唯一不変なものは変化だ」という名言を残しました。この言葉は、ビジネス界を含む、人生のあらゆる側面に当てはまります。技術的環境が急激に進化している現在、その変化のペースについていくというプレッシャーが、あらゆる業界の企業にのしかかっています。そのことは、人工知能(AI)があらゆる業界に急速に普及し、ビジネスの手法を変革している状況からも明らかです。 
 
ローカリゼーション業界も例外ではありません。テクノロジーの絶え間ない進化と市場ニーズの変化により、業界の動向を常に把握することがかつてないほど重要になっているのです。このため、Tradosは先日、業界全体を対象にした3回目の翻訳テクノロジーに関するインサイト(TTI)(2023年版)調査を実施し、翻訳業界のプロフェッショナルが直面している課題を明らかにするとともに、その課題に対処するための貴重なインサイトを提示しました。 
 
このブログでは、TTI調査の結果を通じ、400を超える企業の翻訳部門にプレッシャーがかかっている現状の影響について詳しく見ていきます。また、デジタルカスタマーエンゲージメントの向上と優れた顧客体験の提供に際し、ローカリゼーションが企業にとって重要な役割を果たす理由もご説明します。
 
プレッシャーがのしかかる業界:翻訳需要の高まり 
 
今日のグローバル経済においては、企業はさまざまなチャネルからやって来る多種多様な形式の大量のコンテンツをローカライズし、世界中のオーディエンスに効果的にリーチする必要があります。翻訳プログラムを導入している企業でさえ、この需要の増加を負担に感じているところです。TTIからは、翻訳作業の需要が高まっていること、企業がその矢面に立たされていることがわかります。  
 
翻訳会社や個人翻訳者もプレッシャーを感じていますが、企業は特に3つの点での需要の増大を目の当たりにしています。いずれも過去12か月の、プロジェクトファイルの数(48%)、作業を依頼する部門の数(37%)、プロジェクトあたりのワード数(37%)です。 
 
TTIからは、翻訳部門にとってさらに迅速な翻訳の提供が常に大きなプレッシャーであること、また、高品質な翻訳が依然として最優先事項であることもわかっています。そのような中で、企業は翻訳需要の高まりにどう対応しているのでしょうか? 
 
プレッシャーからの解放:テクノロジーが担う役割 
 
テクノロジーは翻訳作業のプレッシャーを軽減できますが、すべてのソリューションが同等というわけではありません。過去30年間と同じように、翻訳メモリ用語集翻訳支援ソフトウェア(CAT)などの従来のテクノロジーを使用するだけでは、もはや不十分です。機械翻訳の利用増加でプロセスがスピードアップしてはいるものの、コンテンツの規模とペースの問題は、従来の翻訳プロセスでは処理しきれなくなっています。だからこそ、新しいテクノロジーを導入して翻訳の需要に対応する必要があるのです。   
 
この業界はテクノロジーの導入に関して概ね成熟しているように見えますが、それでも完全とは言えません。TTIに参加した企業の53%が、CSA Researchが開発したローカリゼーションの成熟度モデル(LLM)で自社は成熟度が低いと評価しています。また、69%の企業で翻訳支援ソフトウェアがいまだ重要な役割を果たしていることから、新しいテクノロジーやプロセスの導入という観点では多くが後れを取っている恰好です。  
 
翻訳管理システム(TMS)や、ソフトウェアローカリゼーションツールコネクタなど、比較的新しいものの、すでに確立されているテクノロジーは、ほとんど活用されていません。こうしたテクノロジー製品は、翻訳プロセスを通じてコンテンツをシームレスに処理することで作業のプレッシャーを大幅に軽減し、時間のかかるタスクを自動化してくれる可能性を持っています。導入が進んでいないことを考えれば、73%の企業が作業プロセスの改善を目指しているのは当然と言えるでしょう。
 
 
 
企業にとってテクノロジーが重要な理由  
 
企業はなぜ、独自の翻訳管理プロセスの改善に投資すべきなのでしょうか?答えは明白です。企業にとって最も重要な「顧客」のためです。 
 
RWSの『UNLOCKED 2023 - 「グローバル理解の実現」の達成』レポートは、13のグローバル市場でeコマースサイトを利用している6,500人のユーザーを対象に行った調査をまとめたものですが、このレポートからは、見込み顧客に対し、その顧客の言語でコミュニケーションすることの重要性が明らかになりました。また、消費者の82%が、現地の言語でサポートを提供していないグローバルサイトからは購入しないこともわかっています。 
 
現代の顧客はオンラインを多用し、さまざまなチャネルでコンテンツを利用しているため、ローカリゼーションへの投資は企業にとって、関連性と競争力を維持するための重要な要素になっています。消費者行動の最大の変化は、ローカリゼーション業界と関連するもので、すなわち自分の言語のコンテンツを利用したいという期待が高まっていることです。そして、自分の言語のコンテンツを利用できなければ、他社に移ってしまう可能性も高くなります。  

顧客に恩恵をもたらす行動は企業の利益となりますが、全世界の消費者の71%が、通常のグローバル体験を提供するブランドよりも、ローカライズしたオンライン体験を提供しているブランドを信頼しているという調査結果からは、デジタルチャネルを通じて世界中の顧客と関わり、信頼を構築し、新たな市場に進出しようとする企業には大きなチャンスがあることがはっきりわかります。こうした知識があれば、企業は情報に基づいた意思決定を行い、予防的な措置を講じて、継続的な変化に直面してもビジネスを成功させることができます。

変化を適切に乗り切る

変化に困難は付きものです。それでも多くの企業は翻訳に関し、最新のツールを使用してチーム内およびチーム間をつなぎ、自動化や共同作業を行うことで、変化に適切に対応しています。その一例をご紹介しましょう。人気の高いあるスキンケアeコマース企業では、グローバル化を急速に進めたいと考えていました。この企業のデジタル変革の要件においては時間が最も重要な要素であり、同社では翻訳が障害になり得るとすぐに判断しました。そこで、CRMコネクタを備えたクラウドベースのTMSをわずか2日間で導入し、アジャイルなプロセスの採用とサポートを実現しました。このケーススタディについて詳しくは、こちらでご覧いただけます。 

このように、企業が、業界の変化し続ける要求に対応し、高まるプレッシャーに対処し、常に時代の先を行くには、適切な翻訳テクノロジーを導入することが重要です。この投資により、コンテンツと顧客のつながりを保ち、前向きで長期的な関係を構築できるのです。 

ローカリゼーション業界が直面しているプレッシャーや、主要テクノロジーに対する考え方の変化については、TTI 2023年版レポートをご覧ください。

Camille Avila
制作者

Camille Avila

Product Marketing Manager
Camille Avilaは、翻訳業界で8年間の経験を持つRWSのSenior Product Marketing Managerです。現在、Trados製品スイートを統括しています。法人市場向けのローカリゼーションに取り組むCamilleの主な役割は、コンテンツを確実に理解されるようにして顧客との効果的なコミュニケーションを支援することです。
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