Trados Studioのコメント機能とComment View Pluginを使った効率的なコメントのやり取りとコメント/クエリ(質問)の効果的な書き方


Trados Studioのコメント機能とComment View Pluginを使った効率的なコメントのやり取りとコメント/クエリ(質問)の効果的な書き方
翻訳中に原文の問題点や不明点に出くわしたとき、皆さんはどのようにして依頼元や校閲者に申し送りや質問を行っているでしょうか?
また、翻訳を依頼する際に、細かい指示や注意点などを作業者にどのように伝えているでしょうか?
別途Excelシートなどに質問事項をまとめたり、別ファイルやメールなどで作業指示を伝えたりしている方も多いのではないでしょうか?
そのような場合、記入日、記入者、該当箇所を含むファイル名、バイリンガルファイル上での該当箇所(分節番号)、原文テキスト、訳文テキスト、質問事項などの情報をすべて手作業で入力するかコピーするのが億劫になってしまったり、締め切りが迫ってきたりして、ついつい必要な申し送りや質問を伝えないまま後工程にファイルだけを送ってしまったということはないでしょうか?
今回はTrados Studioのコメント機能とComment View Pluginを使用して作業指示や申し送りコメントを作業者間で効率的に伝達する方法と、効果的なコメントの書き方をご紹介します。
Trados Studioのコメント機能の基本的な使い方
すでにご存じの方も多いかと思いますが、Trados Studioには訳文分節全体や訳文分節内の特定の範囲や翻訳対象ファイル全体にコメントを追加する機能があります。その基本的な使い方は次のとおりです。
注: Trados Studio内で原文分節にコメントを追加することはできませんが、原文ファイル自体に追加されているコメントを原文分節に取り込む方法もあります。その方法については後述します。
① 訳文分節内の特定の範囲にコメントを付けたい場合
- コメントを付けたい範囲をマウスまたはキーボードで選択(ハイライト)します。
- 選択した範囲を右クリックして [コメントの追加] を選択するか、上部リボンの [レビュー] タブにある [コメントの追加] ボタンをクリックします。
- [コメントの追加] ダイアログボックスの [範囲] ドロップダウンボックスで [現在の選択内容] が選択されていることを確認し、[重大度レベル] を必要に応じて変更して、コメント入力欄にコメントを入力し、[OK] をクリックします。
- コメントを付けた部分にマーカーが適用され(マーカーの色は重大度に応じて変わります)、マウスカーソルを合わせるとポップアップウィンドウに記入者、記入日、コメントが表示されます。
- また、既定でエディタのすぐ上に表示される [コメント] タブをクリックすると、現在開いているバイリンガルファイルに追加されているコメントが一覧表示されます。
リスト内の各行をダブルクリックするとエディタ内の該当する分節にジャンプできます。
- コメントを編集または削除したい場合は、訳文分節内のコメントが付いた箇所にカーソルを置き、右クリックメニューから [コメントの編集] を選択するか、上部リボンの [レビュー] タブにある [コメントの編集] ボタンをクリックします。
② 特定の訳文分節全体またはファイル全体にコメントを付けたい場合
- 特定の訳文分節全体にコメントを付けたい、該当する訳分節内の任意の位置にカーソルを置いて右クリックし、[コメントの追加] を選択します。
ファイル全体にコメントを付けたい場合は、任意の訳文分節内の任意の位置にカーソルを置いて右クリックし、[コメントの追加] を選択します。
- [コメントの追加] ダイアログボックスの [範囲] ドロップダウンボックスで [現在の分節] (既定)または [現在のファイル] を選択し、[重大度レベル] を必要に応じて変更して、コメント入力欄にコメントを入力し、[OK] をクリックします。
- [現在の分節] を選択した場合は、該当する訳文分節全体にマーカーが適用され(マーカーの色は重大度に応じて変わります)、マウスカーソルを合わせるとポップアップウィンドウに記入者、記入日、コメントが表示されます。
[現在のファイル] を選択した場合は、エディタの最上部に黄色い枠線で囲まれた付箋のようなアイコンが表示され、マウスカーソルを合わせるとポップアップウィンドウにコメントの入力者、入力日、コメントの内容が表示されます。
- また、既定でエディタのすぐ上に表示される [コメント] タブをクリックすると、現在開いているバイリンガルファイルに追加されているコメントが一覧表示されます。
リスト内の各行をダブルクリックするとエディタ内の該当する分節にジャンプできます。
原文ファイルに元々含まれているコメントをバイリンガルファイルの原文分節に取り込む
原文ファイルの形式がWord、Excel、PowerPoint、PDFの場合に限り、原文ファイルに元々含まれているコメントをバイリンガルファイルの原文分節に取り込むことができます。
以下に4つのシナリオごとの設定方法をご紹介します。
① 新規に作成する特定のプロジェクトでのみ原文ファイル内のコメントを取り込む設定を行う
- [新しいプロジェクトの作成] ウィザードを開き(Ctrl+Nを押し)、最初の画面(ワンステップ)で[プロジェクト名]、[場所のパス]、[原文言語]、[訳文言語] を設定した後、[ファイルの種類の識別子] の右にある歯車付きのファイルのアイコンをクリックします。
- [プロジェクト ファイルの種類の設定] ダイアログが開いたら、取り込みたい原文ファイルの形式に応じ、左側のツリーで [Microsoft Word 2007-2019]、[Microsoft Word 97-2003]、[Microsoft Excel 2007-2019]、[Microsoft Excel 97-2003]、[Microsoft PowerPoint 2007-2019]、[Microsoft PowerPoint 97-2003]、または [PDF] の下の [全般設定] を選択し、[Studioの訳文コメントを訳文文書に保持する] をオンにして右下の [OK] ボタンをクリックします。
- [新しいプロジェクトの作成] ウィザードに戻ったら、[選択したフォルダのファイル] の下の枠内にコメント入り原文ファイルをドラッグするか、[ファイルの追加] ボタンまたは [既存のフォルダの追加] ボタンをクリックしてコメント入り原文ファイルまたはコメント入り原文ファイルを含むフォルダを指定して追加し、以降のプロジェクト設定を完了してプロジェクトを作成します。
- 作成されたバイリンガルファイルを開くと、原文ファイル内のコメントが原文分節に取り込まれていることを確認できます。
注: ファイルの種類の設定を後から変更しても、すでに取り込まれているバイリンガルファイルには反映されないため、以下の方法でファイルの種類の設定を変更した後、[ファイルの更新] 機能を使用して原文ファイルを取り込み直す必要があります。
- 該当プロジェクトを開き、上部リボンの [ホーム] タブで [プロジェクトの設定] ボタンをクリックし、左側のツリーで [Microsoft Word 2007-2019]、[Microsoft Word 97-2003]、[Microsoft Excel 2007-2019]、[Microsoft Excel 97-2003]、[Microsoft PowerPoint 2007-2019]、[Microsoft PowerPoint 97-2003]、または [PDF] の下の [全般設定] を選択し、[Studioの訳文コメントを訳文文書に保持する] をオンにして右下の [OK] ボタンをクリックします。
- [ファイル] ビューで該当ファイルを右クリックして [ファイルの更新] を選択し、同じ原文ファイル(コメント入り)を選択すると、原文ファイルの再取り込みが開始されます(すでに訳文が入力済みの分節があった場合、原文がまったく変わっていなければ、訳文と分節ステータスがそのまま再取り込み後のバイリンガルファイルに引き継がれます)。
- 再取り込みされたバイリンガルファイルを開くと、原文ファイル内のコメントが原文分節に取り込まれていることを確認できます。
③ 既存のプロジェクトに新たに追加するファイルに対して原文ファイル内のコメントを取り込む設定を行う
- 該当プロジェクトを開き、上部リボンの [ホーム] タブで [プロジェクトの設定] ボタンをクリックし、左側のツリーで [Microsoft Word 2007-2019]、[Microsoft Word 97-2003]、[Microsoft Excel 2007-2019]、[Microsoft Excel 97-2003]、[Microsoft PowerPoint 2007-2019]、[Microsoft PowerPoint 97-2003]、または [PDF] の下の [全般設定] を選択し、[Studioの訳文コメントを訳文文書に保持する] をオンにして右下の [OK] ボタンをクリックします。
- [ファイル] ビューで、ファイルリストの空白部分を右クリックし、[ファイルの追加] > [ファイルのクイック追加] を選択して、追加する原文ファイル(コメント入り)を指定します。
- ファイルの取り込みが完了した後、該当バイリンガルファイルを開くと、原文ファイル内のコメントが原文分節に取り込まれていることを確認できます。
④ 今後新規に作成するすべてのプロジェクトに対して原文ファイル内のコメントを取り込む設定を行う
- 上部リボンの [ファイル] タブを選択して画面右側にある [オプション] をクリックし、[オプション] ダイアログが開いたら、左側のツリーで [ファイルの種類] を選択し、[Microsoft Word 2007-2019]、[Microsoft Word 97-2003]、[Microsoft Excel 2007-2019]、[Microsoft Excel 97-2003]、[Microsoft PowerPoint 2007-2019]、[Microsoft PowerPoint 97-2003]、または [PDF] の下の [全般設定] を選択し、[Studioの訳文コメントを訳文文書に保持する] をオンにして右下の [OK] ボタンをクリックします。
- 以後、新規に作成するすべてのプロジェクトで上記の設定がデフォルトで適用されます。
Comment View Pluginを使用してコメントをExcelファイルにエクスポートする
翻訳/レビューの依頼元や後工程の担当者への申し送り事項や質問がある場合、Excelファイルなどに別途まとめて提出するよう指示されているケースも少なくないでしょう。
そのような場合に便利なのがComment View Pluginです。Comment View PluginをTrados Studioにインストールすると、Trados Studio内でバイリンガルファイルに追加したコメントをExcelファイルなどにエクスポートすることができます。
注: このプラグインはTrados Studio 2021以降でのみサポートされています。
このプラグインをインストールすると、[プロジェクト] ビューおよび [ファイル] ビューの下部に [Comment View Plugin] タブが追加されます。
[ファイル] ビューの中央にあるファイルリストでファイルを選択すると、それらのファイルに含まれるコメントが下図のように一覧表示されます。また、一覧の中で特定の行を選択すると、該当する分節の原文と訳文が右端に表示され、コメントが適用されている部分は黄色などでハイライトされます。
一覧表示されているコメントをExcelファイルにエクスポートするには、左下の [Export Comments] ボタンをクリックします。下図のダイアログが表示されたら、Excelファイルにエクスポートする/しない項目を選択/選択解除して右下の [Export] ボタンをクリックし、エクスポートするExcelファイルの名前と保存場所を指定します。
下図のようなExcelファイルがエクスポートされます。この内容を指定の申し送りフォームにコピーしたり、列などを加工することで、1件ずつコメントを転記する手間を大幅に削減できます。
効果的なコメントの書き方
最後に、コメントの内容の書き方そのものについてです。
原文の内容や処理方法などに不明点がある場合、単に「〇〇の部分がよくわかりません」や「ここはどうすればよいですか?」のようにぶっきらぼうな質問を残すだけでは、事実確認や判断の手間を相手にすべて任せることとなり、心証があまりよくありませんし、場合によっては無視されてしまうかもしれません。
質問を行うときは、「私は〇〇と思うのですがこの解釈で合っていますか?」や、「〇〇には△△と書かれていますがこれで正しいですか?」や、「〇〇のように処理していますが△△のように処理した方がよいですか?」のように、「はい」か「いいえ」で回答できるような質問の仕方を心がけるとコミュニケーションがスムーズになり、後工程の担当者にとって親切と言えます。
また、多少でも不安がある箇所に片っ端からコメントを付けるのもあまり望ましくありません。相手に余計な不安や負担を与えることにもなりかねませんので、質問や申し送りは必要なものだけにとどめて的確に行うことを心がけましょう。