Trados Studio 2024の新しいマネージャビューでユーザー体験を向上

Marta Allard 2024年4月8日 読了目安時間:6分
理想の世界では、1日の仕事は次のように始まります。プロジェクトの対象範囲とターゲットオーディエンスに関する明確な指示とともにプロジェクトパッケージを受け取ります。原文ファイルの最終版と参照資料がすべて存在し、理にかなった期限が設定されています。この夢のような世界では、中断されることなくプロジェクトに取り組み、達成感を感じつつ[完了としてマーク]ボタンをクリックして1日が終了します。 
 
現実世界ではどうでしょぅか。翻訳者や翻訳プロジェクトマネージャーの1日がこのように進むことはほとんどありません。多くの場合、プロジェクトの数が多すぎ、期限が重なることもよくあります。複数のファイルを複数の言語に翻訳する必要があり、重要な参照情報が欠如していることもあります。もちろん、プロジェクト期間中、時を問わず原文ファイルが更新されてしまいます。 
 
このようなひっ迫した状態では、適切なツールを用意するだけでは不十分です。そのツール(およびそのツールに表示される情報)にできるだけ迅速かつ容易にアクセスできなければなりません。  
 
Tradosでは、ユーザー体験を向上させ、直面する課題をより適切に解決するための新しい方法を常に模索しています。そのため、Trados Studio 2024では、プロジェクトやファイル、レポートでの作業方法を改善し、プロジェクトをより効率的かつ直感的に管理できるようにしました。 
 

マネージャビューの導入 

具体的にご説明しましょう。「マネージャ」という新しいビューを導入しました。これは、Trados Studioで使用できるプロジェクト、ファイル、レポートの管理ビューを1つの使いやすいインターフェイスに統合するものです。 
 
この新機能は当初、Trados Studio 2022でベータ版としてリリースされ、今ではこの完全版が利用できるようになりました。次のようなあらゆる形式のプロジェクトの作業時に、より優れたユーザー体験を実現できます。 
  • ファイルベースのTrados Studioプロジェクト 
  • ファイルベースのTrados Studioプロジェクトパッケージ 
  • 単一ファイルのTrados Studioプロジェクト 
  • クラウドのプロジェクト 
  • GroupShareプロジェクト 
  • WorldServerプロジェクト 
まずご注意いただきたいのは、なくなる機能はないということです。プロジェクト、ファイル、レポートの元の管理ビューも継続されるため、従来の方法で作業を続けたい方は引き続き利用できます。  
 

マネージャビューを使用する理由 

Trados Studio 2024のマネージャビューには、次のような多くのメリットがあります。 


1か所で作業可能 

優先順位が競合する場合や複数のタスクを同時に処理する場合、すべてのプロジェクト、ファイル、情報にアクセスできる一元管理されたハブがあると、ワークフローを大幅に効率化し、作業をスピードアップできます。マネージャビューでは、1つの作業領域が表示され、すべてのプロジェクト、ファイル、統計情報の一覧にアクセスできます。複数のビューをクリックする必要はありません。プロジェクトのガントチャートでは、自分のやるべきことを視覚的に確認することもできます。 


 
マネージャビューに表示されるプロジェクトのガントチャートのスクリーンショット 
 
プロジェクト期間中に必要な処理には、マネージャビューからアクセスできます。たとえば、次の処理を行うことができます。 
  • プロジェクトの作成、プロジェクトのステータスの更新、プロジェクトを完了としてマーク付け 
  • プロジェクトの詳細、ファイルの統計情報(単語数、サイズ、ファイル形式、使用状況、ステータス、進捗率など)、ステータス情報の表示 
  • 翻訳、レビュー、またはリリース用のファイルを開き、一括タスクを実行 
  • 解析レポートの表示、保存、印刷、削除 


必要なものを迅速に検索 

時間は私たちにとって最も貴重なリソースです。そのため、ユーザーが必要な情報をすばやく簡単に見つけられることが不可欠です。たとえば、「今日納期のプロジェクトはどれか?」、「プロジェクト内で最大のファイルはどれか?」、「今月作成されたプロジェクトは何件か?」などの情報が必要になることがあるでしょう。  

マネージャビューでは、情報を簡単に検索でき、より具体的な情報を絞り込むための詳細オプションが用意されています。たとえば、次の機能を活用できます。
  • 検索ボックス:プロジェクトやファイルを名前に基づいてすばやく見つけることが可能 
  • 高度なプロジェクト検索ヘルプ:ステータス、プロジェクトの種類、顧客、締め切り日、作成日などのフィルターで絞り込み 
  • 優れた並べ替え機能:アルファベット順、締め切り日順、作成日順、ワード数順。最も重要な情報にすばやくアクセス可能 

 
マネージャビューで使用可能な検索オプションと並べ替えオプションのスクリーンショット 


複数のプロジェクトを一度に処理 

進行中のプロジェクトを複数抱えるのは、翻訳者やプロジェクトマネージャーにとってごく当たり前のことです。あるプロジェクトの作業を中断して、別のプロジェクトのステータスを報告する必要や、急に入った短いプロジェクトのレビューを行う必要があることがあります。異なるプロジェクトの複数のタスクを処理することは、日常的に直面する課題です。 

マネージャビューを使用すると、複数のプロジェクトを同時に開くことができ、ウィンドウを閉じたり開いたり、情報を復元したりすることなく、別のプロジェクトに簡単に移動できます。これにより、進行中の複数のプロジェクトに注目し続けることや、あるプロジェクトの作業を中断して、別のプロジェクトで緊急のタスクに容易に取り組むことができます。


プロジェクトの途中でのファイル更新が容易 

細心の注意を払って計画したにもかかわらず、プロジェクトが進行中に変化することはよくあります。プロジェクトには変化する可能性のある要素が多数ありますが、その中でも翻訳者やプロジェクトマネージャーにとって悩みの種と言えるのが、新しいファイルの追加です。Trados Studioの機能を活用すれば、マネージャビューから直接このような悩みの種に対処できます。  マネージャビューから、ファイルをすばやく追加し、そのプロジェクトの開始時に他のファイルに対して実行したものと同じ処理タスクを適用できます。または、カスタムの一括タスクを実行し、ファイルを異なる方法で処理するよう指定することもできます。もしくは、必要に応じて新しいファイルを参照用として追加することもできます。
 

自分好みにアレンジ 

ユーザーによって、ワークステーションの構成や習慣は異なります。効率よく作業できるようにする最善の方法は、表示される情報やその表示方法の調整を最大限ユーザーに任せることです。マネージャビューでは、次のような方法により、まさにそれが可能になります。  

  • セクションのサイズ変更や、特定のウィンドウを使用していないときに自動的に非表示にする設定が可能。これにより、画面上に各種領域をどの程度割り当てるのか、どのような情報に焦点を当てるのかを各自が選択できます。 
  • 複数のプロジェクトを一度に開き、各プロジェクトの情報をどのように表示するのかを選択可能。プロジェクトの「タブ表示」(インターネットブラウザで各ウィンドウを並べて表示する方法と同様)、プロジェクトの「ドッキング」(画面上でプロジェクトの表示場所を移動するため)または「フローティング」(Trados Studioのインターフェイス外に別のウィンドウとして配置可能)の設定が可能。ウィンドウのフローティングとドッキングが可能なため、セカンダリモニターへの移動も可能です。 
  • プロジェクト情報(名前、サイズ、単語数など)を好みの順序に並べ替え可能。前述のように、これらの列内の情報を自在に並べ替えられます。 

 
マネージャビューのドッキング可能なタブのスクリーンショット
 

いかがでしょうか? 

これまでご説明してきたように、新しいマネージャビューを使用する理由は数多くあります。それでも、この優れた新機能をユーザーがどのように使用しているのか、また、機能を改善するために何ができるのかが、常に気になります。そこで、ユーザーからフィードバックを提供していただけるようにオプションを用意しました。マネージャビューから評価やコメントを直接送信できますので、ぜひご利用ください。 
 

Trados Studio 2024を導入する準備はできていますか? 

新しいマネージャビューにより、Trados Studioのユーザー体験を向上させ、カスタマイズ可能な、より詳細な作業方法でプロジェクトを進行できるようになります。これは、最新リリースで利用できる数多くの新機能の1つにすぎません。 
 
クラウド環境とデスクトップ環境のさらなる統合強化をはじめとするTrados Studio 2024の新機能について詳しく知りたい方は、Principal Product ManagerのDaniel Brockmannによるウェビナーをご覧ください。
Maria Schnell
制作者

Marta Allard

Chief Language Officer
Marta Allardは、翻訳学の博士号を取得しており、言語テクノロジー分野において15年以上の実務経験を有しています。トレーニングおよび導入のスペシャリストとして、世界中のさまざまな民間企業や行政機関に翻訳管理ソリューションを導入しました。その後、Professional Services Managerとして国際的なチームを率いています。いくつかの合併・買収を経て、現在はRWS Linguistic AIコンサルティングチームのソリューションコンサルタントとして、製品チームと密に連携し、顧客に適した効果的なソリューションを設計するとともに、調査プロジェクトに参加しています。プライベートでは、マギル大学の多言語デジタルコミュニケーション学科の言語テクノロジーコースで教鞭をとり、新しい修士号のカリキュラム設計に取り組んでいます。
この執筆者の全記事: Marta Allard