翻訳者がリモートワークをしながら生産性と健康を保つ方法

Nicole Loney 2020年6月5日 読了目安時間:8分
翻訳者がリモートワークをしながら生産性と健康を保つ方法
個人翻訳者にとって、リモートワークという概念は新しいものではありません。自宅の作業環境でドキュメントを翻訳する。これは、多くの個人翻訳者にとって日常です。しかし、現在の世界情勢から、通常は企業のオフィスで作業している多くプロの翻訳者も作業拠点を自宅に移さざるを得なくなっています。
 
このような翻訳者の中には、自宅にこもって作業する状況をなかなか受け入れられない人もいます。気軽に質問できる同僚や、締め切り直前の作業をサポートしてくれる同僚は周囲にいません。自宅の作業用デスクや機器が、設備の整ったオフィスで使用しているものより劣っている場合もあります。 
 
医療分野を専門とするスペイン語>英語の翻訳者Emma Goldsmith氏は、在宅作業に精通しています。そこで、この未曾有の時代において、生産性、効率性、そして最も重要な健康を維持しながら作業するうえで役立つヒントを伺いました。 
 
 
プロの翻訳者として、自宅で作業しなければならない場合に直面する問題とは何でしょうか?
 
私にとって、自宅で作業するということは珍しい状況でありません。個人翻訳者として、いつも自宅で作業しています。新型コロナウイルス感染症の流行が理由ではありません。もちろん、他の人がそうでないことは知っています。幸い私には自分の書斎と作業スペースがありますが、このような奇妙な緊急事態下では、そうでない人も大勢いるでしょう。キッチンのテーブルで作業するしかない人もいると思います。
 
第一に考えなければならないのは、翻訳者としてコンピュータの前で費やす時間です。チェアとデスクは最も重要な設備と言っていいでしょう。ソフトウェアやハードウェアについて考えるのはその次です。 
 
高さを調節でき、腰をしっかりとサポートできるチェアを選ぶことがとても重要です。最適な姿勢は、直角で座ることです。肘と膝は直角、下半身もシートに深く座り、直角になるようにします。そのためには、調節可能なチェアが必要です。 
 
 
翻訳者が背中の痛みやこわばりなどを軽減するのに役立つ、お勧めのストレッチやエクササイズはありますか?
 
Tradosが、役立つデスクヨガシリーズを提供しています。これは、体のさまざまな部位に焦点を合わせた短編動画シリーズで、たとえば、首のストレッチ方法、肩こりの解消方法、手首や指のストレッチ方法などを紹介しています。どんなストレッチをすべきか、よいヒントになります。
 
このようなエクササイズの目的は反復運動損傷(RSI)を防ぐことなので、痛みなど症状がなくても、誰もが予防的に行うことが重要です。
 
 
自宅で作業していると、気が散ることがよくあります。これをできるだけ防ぐお勧めの方法はありますか?
 
静かな環境で作業したい翻訳者は多く、他の部屋の会話やテレビの音が邪魔になることがよくあります。急ごしらえの環境で作業する人には、ノイズキャンセルイヤホンがお薦めです。音楽を流しながらでも、周囲の雑音を遮断できるため、一部の翻訳者には効果的です。また、作業している間、同居人や家族に邪魔をしないよう言い聞かせることもよくあります。
 
オンラインで気が散ってしまう場合は、その改善に役立つアプリもあります。今は使っていませんが、「Cold Turkey」というアプリを使っていたことがあります。これは、特定の時間帯に使用したくない特定のウェブサイトをブロックするものです。たとえば、Facebookをブロックすれば、作業中、邪魔になったり、見たくなったりすることがなくなります。 
 
また、「どこ」で多くの時間を費やしているのか気づいていない人もいます。そういう場合は、「Manictime」というアプリが便利です。たとえば、Trados StudioやMicrosoft Wordで作業している時間や、ソーシャルメディアを閲覧している時間などを把握できます。
 
 
自宅で作業している翻訳者の生産性向上に役立つと思う機器はありますか?
 
作業場を急に移した人の中には、作業に使うノートPCしかないという人もいるでしょう。ノートPCは画面が小さいので、もう1つモニタがあると重宝します。一方のモニタで作業し、もう一方でブラウザを開くようにすると、作業と調べものを同時にできて便利です。私自身は、一方のモニタでコーパスツール、もう一方でTrados Studioを使用することもよくあります。モニタが2台あると生産性が大幅に向上するので、モニタを追加できる機会があれば、ぜひそうしてください。
 
モニタを2台にするほか、ノートPCで作業するなら、外付けキーボードを使用すると作業スペースがレベルアップします。先ほど、作業するときは肘を直角に保てる姿勢が理想的とお話しましたが、それには、画面から腕の長さ分の距離を確保し、目の負担を軽減する必要があります。ノートPCの内蔵キーボードを使用していると、目に推奨される距離よりもかなり近くなります。外付けキーボードは非常に安価に購入できるため、投資する価値は十分にあります。 
 
加えて、私は最近、人間工学に基づいたマウスも導入しました。以前は普通のマウスを使っていたのですが、新しいマウスにしたら手と手首の位置が改善されました。また、私はマウスを2個使います。変わっていると思われるかもしれませんが、翻訳者には強くお勧めします。もう一方の手も使えるよう練習すると、通常マウスを使う利き手への負担が半分になり、RSIを発症する可能性が低くなるからです。
 
最後に、これは個人的な好みなのですが、自宅の作業スペースの壁にもホワイトボードを取り付けています。こうしておくと、大切なことや、やることリスト、Trados Studioのショートカットをメモしておくのに便利です。今は、Ctrl+Shift+PgDnで分節全体を選択できることを知ったばかりなので、それがホワイトボードに書いてあります。 
 
Trados imagery
 
 
周囲のスペースについては、何かお勧めはありますか?インテリアや照明、作業スペース全体の雰囲気などについて、どのようにお考えですか?
 
まず、常に快適な室温で作業する必要があります。また、直射日光は眩しすぎるため、窓の正面に座るのは避けてください。同様に、光源が背後にあるのも、コンピュータ画面に反射して目が疲れるのでよくありません。できれば、左右いずれかにある窓から光が入るようにしてください。
 
自然光が入らない場合は、新しい照明がたくさん出ているので、利用するといいでしょう。  私は、デスクや棚の周りにLEDテープライトを取り付けていて、作業中に暗くなったら使っています。もちろん、古くてちらつく蛍光灯は使わないようにしてください。
 
また、作業するときはスペースにゆとりが欲しいので、デスクを整理整頓して散らからないようにしています。翻訳作業に集中したいときは、周囲に物理的な余裕があったほうが心理的にもいいと思います。
 
 
自宅にいるとき、仕事の時間、家族との時間、娯楽の時間を効果的に線引きするにはどうしたらよいですか?
 
それは非常に簡単です。顧客には営業時間があるので、こちらもその時間を守る必要があります。自宅では柔軟に作業できると思われがちですが、顧客がオフィスにいる時間帯はいつでも対応できるようにしておかなければなりません。私は通常、9時から17時まで作業し、週末は休みます。変則的に週末に作業する必要がある場合は、代わりに平日に休暇を取るようにしてください。 
 
もちろん、スマートフォンがあるので常にメールでつながってはいますが、仕事と生活のバランスを取ることを常に念頭に置くことが大切です。デスク以外では、どの程度つながっていたいと思いますか?
 
家族との約束なら、納期が迫っていても、食事を逃さないことが重要です。家族との食事の時間は常に守り、家族と過ごす時間は、顧客と連絡を取り合ったり、電話に気を取られたりしてはいけません。家族の時間と仕事の時間をきっちり分けることが不可欠です。 
 
 
生産性と効率性を維持するため、他の在宅翻訳者にお勧めしたい究極のヒントやコツはありますか?
 
最も重要なヒントの1つは、バックアップシステムです。通常は自宅以外で作業している場合でも、いえ、そういう場合こそ、バックアップシステムが重要になります。ファイルを失うと深刻な事態に陥りかねません。ブルースクリーンになったら悲惨です!OneDriveなどのアプリケーションや、クラウド内のどこでもいいです。選択肢は豊富にあるので、データ(原文ファイル、訳文ファイル、翻訳メモリなど)をオンラインストレージにバックアップしてください。 
 
物理的なバックアップとしては、最悪の事態に陥っても比較的迅速に稼働できる代替マシンを用意することが非常に重要です。結局のところ、自宅で作業する場合、すべてのデータや機器の責任は自分にあるのです。 
 
 
まとめると...
 
最初は納得のいかない環境で作業することになっても、生産的で健全な心理状態を維持することが最も重要です。自宅で作業を始める際、Emmaの実践的なヒントを役立てていただけたら幸いです。 
 
また、この状況があなたにもたらす、ささやかな贅沢についても考えてみてください。ペットは(飼っている場合)、あなたがそばにいることを喜んでいるでしょう。お気に入りのパジャマで仕事をしてもかまいません。交通費の節約にもなります。お茶やコーヒーを自由に飲めます(もちろん、お気に入りのテイストで!)。大切な人たちと過ごす時間も増えるかもしれません。この点は、業界を問わず、本当に貴重だと多くの専門家が考えています。
 
自宅の作業環境が自分にかなり合っていると思うようになるかもしれません。Trados Studioでは、デスクトップのオフライン環境、ブラウザのオンライン環境、さらにデバイスの種類も自由に選択できます。これは、働き方に縛られたくない翻訳者に大きな柔軟性をもたらします。オフィスに戻っても、自宅の作業デスクを廃棄しないでください。そのまま使い続けることもできるのです!
Nicole Loney
制作者

Nicole Loney

Product Marketing Manager
2015年にアベリストウィス大学を卒業し、マーケティング分野の学歴と職歴を持つNicole Loneyは、現在、TradosのProduct Marketing Managerを務めています。個人翻訳者と翻訳会社市場に主眼を置き、新製品の発売、製品に関するコンテンツの作成、市場調査の実施を担当しています。マーケティングとフランス語の学位を持ち、消費者行動、顧客ニーズの把握、顧客にとって有益なソリューションの提示に情熱を傾けています。
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