用語集の導入 - 過去からの脱却
アクティブリスニング以外のコミュニケーションの形式では、私の場合、多大な努力が必要になります。 正しく発音したり、文脈を正確に組み立てたりする能力が、私には少し欠けているからです。その代わり、私は生まれつき無意識に皮肉を言ってしまうという、時には厄介な才能には恵まれているようです。 私の失敗談があまりにも面白いので、発表すべきだとずっと言われてきました。思えば子供の頃も、先生から常に辞書を持ち歩くようにと言われていました。これに対し、私は「正しい使い方がわからなければ役に立たないのでは?」と言い返しました。
このように、個人の問題ではいつも戦っていますが、私の専門家としての資質や業界のインサイトに疑問を持たれたことはほとんどありません。その理由の1つはローカリゼーション業界での勤続年数ですが、それよりも、とても多くの顧客エンゲージメントに関わってきたことが大きいと感じます。この経験により、私は自信を持って自由に発言することができ、用語集は見込み客にとって常に効果的で興味深い話題であると確信できるのです。用語集のメリットなら難なく伝えられますし、一貫性の確保はよく論点になります。
用語集が重要な理由
たとえば「Chips」。単数形でも複数形でも、フィッシュ&チップスのチップス(フライドポテト)や、ギャンブルのチップ(お金)を意味します。電子機器のチップ(構成部品)や塗料のチップ(塗料のはがれた欠片)が思い浮かぶ人もいるのではないでしょうか。これらはイギリス英語の定義にすぎません。アメリカ英語の解釈を持ち出すと、さらに複雑になるのでやめておきましょう。文脈は重要です。どうでもよいことではありません。
用語集ソリューションでは、文脈に対する正確さだけでなく、用語のライフサイクルも管理する必要があります。私の語彙や理解力は今も試されていて、新たな言葉や用語が加わり成長しています。ほんの数年前は、gaslighting、wokery、furlough、xenophobia、neurodiversityなどの言葉を聞いたことがありませんでした。多分、これらの言葉が、私に関わるようになったのがつい最近であるか、さまざまなニュースチャンネルで頻繁に使われるようになったためと思われます。言語の変化には常に敏感であることが重要です。敏感であれば、社会的に受け入れられるだけでなく、変化の絶えない市場を常に把握できます。たとえば、企業としてのSDLはすでに存在しません。2020年に買収され、RWSの一部となりました。このため、翻訳支援ソフトウェアの名称はSDL Trados StudioからTrados Studioに変更されました。このような用語の変化を管理できるツールは、用語集ソリューション以外にありません。
用語集の導入
用語集とそのすべてのメリットを活用する準備が整っているとは言っても、何から着手しますか?以下に、その主なトピックを挙げました。
これらをどのように処理しますか?
- 既存の用語の移行
- プロジェクト関連用語の収集
- 分野固有の用語
- パイプマーク、類義語、クロス用語やリンクする用語、エントリID
- 用語ベースの定義
- さまざまな値の種類が含まれた独自の説明フィールド。その一部は必須。
- 独自のレイアウトと分類
- 新しい用語、用語変更のリクエスト
- 多数決または先任者による用語承認とワークフロー
- 一貫性、一元化、アクセシビリティ、権限
これらを完璧にできるお客様はめったにいません。あまりの細かさと先行きの不透明感に途方に暮れる方も多いでしょう。用語集の導入で得られるメリットと導入の難しさのバランスの取り方がわからないからです。当社の用語集ソリューションであるMultiTermを試したことがある方も多いかもしれません。MultiTermは、非常に複雑な用語集ニーズの管理に初めて挑む方に最適なツールです。それでも、多くの場合、大量にある設定に圧倒されてしまいます。
先生に対する私の反応である「正しい使い方がわからなければ役に立たないのでは?」を思い返すと、常に辞書を持ち歩くという提案は間違っていませんでした。しかし、本をもう1冊追加するという考えは、私にとって現実的でなく、効果的に使えないという懸念も解消されませんでした。用語集を活用するために必要なツールの使用方法がわからなかれば、用語集の導入を躊躇するというのもよくわかります。
よって、ここではMultiTermなどのソリューションを宣伝するのではなく、APIをご紹介します。用語集を使い始めるユーザーをサポートするため、Trados StudioのAPIを使用して、次のようなさまざまなアプリが開発されました。
Microsoft Excelスプレッドシートに用語を保存することで、用語集を作成し始める人は大勢います。ところが、ExcelはTrados Studioと連携していないため、Trados Studioエディタでの作業中は、用語を簡単に利用することはできません。用語を手動で検索したり、正しく使用しているか照らし合わせて確認したりしているのではないでしょうか。このような場合に役立つアプリが「TermExcelerator」です。この無料アプリを使用すると、Excelスプレッドシートに接続でき、正式なMultiTerm用語ベースを使用しているかのように作業できます。このアプリは、RWS AppStoreから無料でダウンロードできます。
用語集の初心者で、いちから始める場合は、projectTermExtractが便利です。このアプリは、プロジェクトから用語候補を抽出する機能をTrados Studioに追加します。この機能により、ドキュメント全体で繰り返し使用される単語が特定され(設定は、必要に応じて微調整できます)、用語の翻訳手順が示されます。用語をまとめたファイルをExcelにエクスポートし、上記の「Glossary Converter」アプリを使用すれば用語ベースを作成できます。無料でありながら、とても優秀です!
用語集の作成を開始する場合は、従来のツールを超えるものを探すようにしてください。ご紹介したようなオープンAPIやアプリはシンプルで使いやすく、必要に応じて従来の用語集ソリューションの拡張を促進できます。Trados AppStore Developmentチームが開発をしており、このようなアプリは始まりにすぎません。どれも、RWS AppStoreから簡単に入手できます。
「誰でも用語集を使用できますか?」と質問されたら、もちろん「はい!Tradosなら可能です」と答えることができます。