プロジェクトパッケージを使用して翻訳/レビューを依頼し、返却パッケージを使用して作業結果を納品する

島田 智紀 島田 智紀 シニアソリューションコンサルタント 2024年4月22日 読了目安時間:3分 読了目安時間:3分
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プロジェクトパッケージを使用して翻訳/レビューを依頼し、返却パッケージを使用して作業結果を納品する

Trados Studioでは自分で作成したプロジェクトを自分で翻訳/レビューすることもできますが、各種設定、バイリンガルファイル、翻訳メモリ、用語ベースなどをひとまとめにしたプロジェクトパッケージを作成して他のTrados Studioユーザーに翻訳/レビュー作業を依頼することもできます(Trados Studioでのプロジェクトの作成方法については、Trados Studioご利用ガイドの第2章「プロジェクトの作成」をご覧ください)。

また、翻訳/レビュー作業を依頼されたユーザー側では、作業完了後に作業結果の入ったバイリンガルファイルを返却パッケージに格納して依頼元に返送することができます。

このブログ記事では、このプロジェクトパッケージと返却パッケージを使用したTrados Studioユーザー間での作業データのやり取り方法をご紹介します。


[依頼元の手順①] プロジェクトパッケージを作成して他のTrados Studioユーザーに翻訳/レビュー作業を依頼する

  1. Trados Studioの [プロジェクト] ビューで、他のTrados Studioユーザーに翻訳/レビュー作業を依頼したいファイルを含むプロジェクトを右クリックし、[プロジェクト パッケージの作成] を選択します。


  2. [プロジェクト パッケージの作成] ウィザードの最初のページで、パッケージに含めるバイリンガルファイル(翻訳/レビュー作業を依頼したいバイリンガルファイル)の左にあるチェックボックスをオンにし(パッケージに含めたくないファイルのチェックボックスをオフにし)、画面下部の [次へ] をクリックします。


  3. [プロジェクト パッケージのオプション] ページで、パッケージの保存先を必要に応じて変更し、前のページで選択したバイリンガルファイルを(訳文言語にかかわらず、すべて)1つのパッケージに含めるか([1つのパッケージを作成] オプション)、訳文言語ごとに別々のパッケージに含めるか([すべてのプロジェクト言語用にパッケージを作成] オプション)を選択します。

    また、パッケージを複数に分割したい場合は、[すべてのプロジェクト言語用にパッケージを作成] の下にある [最大単語数][最大未翻訳単語数][最大未確定単語数] オプションをオンにして、各パッケージに含める各種の単語の最大数を指定します。これらのオプションについて詳しくは、このページの左下にある [ヘルプ] ボタンをクリックしてヘルプページを参照してください。


    : パッケージを複数に分割するオプションを指定しても、1つのバイリンガルファイルが複数に分割されることはないため、必ずしも指定した単語数どおりにパッケージが分割されるとは限りません。
         なお、1つのバイリンガルファイルを複数に分割する方法については、「studioViewsプラグインの使用手順 ~ファイルの分割と結合~」をご覧ください。


  4. [プロジェクト パッケージの確認] ページで、以下のオプションを設定します。

    [名前] フィールドで(必要に応じて)デフォルトのパッケージ名を変更します。
    [担当者] フィールドで作業を依頼する相手を選択します。
     ※ なお、初期状態では [担当者] ドロップダウンリストにユーザー名が何も表示されません。
     その場合は、[担当者] の右にある [ユーザー] ボタンをクリックし、[ユーザー] ダイアログ(下図)が表示されたら一番上の行の [名前] 列に表示されている「入力してください...」をクリックして任意のユーザー名を入力し、行の右端にあるプラス記号をクリックして [OK] を選択します(電子メールアドレスや電話番号などの入力は省略可能です)。
     その後、[担当者] ドロップダウンリストから新たに追加したユーザーを選択できるようになります。
     
    [タスク] フィールドで依頼する作業の種類([翻訳] か、[レビュー] か、[エラー](最終確認)か)を選択します。
    [締め切り日] チェックボックスを(必要に応じて)オンにし、右端にあるカレンダーアイコンをクリックして締め切り日を指定します。
    [コメント] フィールドに、(必要に応じて)パッケージについてのコメントを入力します。

    前のページでパッケージを複数に分割するオプションを選択した場合は、左側の [パッケージ] ペインに表示されている各パッケージをクリックし、上記のオプションをそれぞれ設定します。
     
    上記のオプションをすべてのパッケージについて設定したら、画面下部の [次へ] をクリックします。

  5. [追加のオプション] ページで、以下のオプションを設定します。(このページの各オプションについて詳しくは、ページ左下の [ヘルプ] ボタンをクリックしてヘルプページを参照してください。以下では特に重要なオプションのについてのみご説明します。)


    [プロジェクト用翻訳メモリ] の下でパッケージにプロジェクト用翻訳メモリを含めるかどうかを選択します。(「プロジェクト用翻訳メモリ」とは、プロジェクトで設定されているメインの翻訳メモリから、プロジェクトに含まれるバイリンガルファイルの原文にコンテキスト一致、100%一致、またはあいまい一致する翻訳単位のみを抽出した小規模な翻訳メモリです。詳しくは、「プロジェクトTM:メインTMとの違いと使用方法」をご覧ください。
    [ファイル共有タイプのリソース] の下でパッケージにメインの翻訳メモリAutoSuggest辞書用語ベースコピーを含めるかどうかを指定します。

    上記のオプションを設定して画面下部の [完了] をクリックすると、選択したバイリンガルファイル、翻訳メモリ、用語ベース、およびプロジェクト設定を含むプロジェクトパッケージ(.sdlppx)が作成されます。


    このプロジェクトパッケージ ファイルをメール添付などの方法で他のTrados Studioユーザーに送付し、翻訳/レビュー作業を依頼します。
: プロジェクトパッケージを作成する機能はTrados Studio Professionalエディションのみでご利用いただけます。
 
ヒント: プロジェクトパッケージ ファイルの末尾に拡張子「.zip」を追加するとWindowsエクスプローラー上で通常のZIPファイルとして扱えるようになり、パッケージに含まれるファイルを直接確認できます。
 
[依頼を受けた側の手順①] プロジェクトパッケージを展開して翻訳/レビューを行い、作業結果(バイリンガルファイル)を返却パッケージに格納して依頼元に返送する
 
  1. 受け取ったプロジェクトパッケージ(.sdlppx)をWindowsエクスプローラー上でダブルクリックするか、Trados Studioの上部リボンで[ファイル]タブを選択し、[開く] > [パッケージを開く] を選択してプロジェクトパッケージを開きます。

  2. [パッケージを開く] ダイアログでパッケージに含まれる翻訳対象ファイルやリファレンスファイルを確認し、プロジェクトパッケージを展開してプロジェクトを作成する場所を [プロジェクト フォルダ] フィールドで指定して [完了] をクリックします。


  3. プロジェクトパッケージから展開されたプロジェクトが [プロジェクト] ビューの一覧に追加されます。プロジェクトパッケージから展開されたプロジェクトの場合は、[種類] 列に「Studioパッケージ」と表示されます。



  4. 通常どおりにプロジェクトの内容を翻訳/レビューします。

  5. 作業が完了したら、[プロジェクト] ビューで該当プロジェクトを右クリックし、[返却パッケージの作成] を選択するか、依頼元に返送するバイリンガルファイルを [ファイル] ビューで選択し(複数のファイルを返送する場合はCtrlまたはShiftキーを押しながら複数ファイルを選択し)を右クリックし、[返却パッケージの作成] を選択します。

  6. [返却パッケージの作成] ダイアログの [ファイル選択] ページで返送するバイリンガルファイルを選択します(元々のプロジェクトパッケージに複数のバイリンガルファイルが含まれていた場合、まとめてすべてのバイリンガルファイルを返送するのではなく、特定のファイルだけを選択して複数回に分けて返送することもできます)。


  7. [返却パッケージのオプション] ページで返却パッケージを作成する場所を必要に応じて指定し、[完了] をクリックすると、指定した場所に返却パッケージ(.sdlrpx)が作成されます。


  8. この返却パッケージ ファイルをメール添付などの方法で依頼元のTrados Studioユーザーに送付し、翻訳/レビュー結果を納品します。
: 返却パッケージにはバイリンガルファイルしか含まれません。翻訳メモリは次のセクションに記載されている方法を取ることにより依頼元側で同期することができますが、用語ベースについては作業者側で加えた変更を同期する方法がないため、翻訳/レビュー作業中に用語ベースに重要な変更を加えた場合は、別途、更新後の用語ベース ファイル(.sdltb)も依頼元に返送する必要があります。

ヒント: 返却パッケージについても、ファイル名の末尾に拡張子「.zip」を追加することにより、Windowsエクスプローラー上で通常のZIPファイルとして扱えるようになり、パッケージに含まれるファイルを直接確認できます。
 
 

[依頼元側の手順②] 返却パッケージの内容(バイリンガルファイル)を元のプロジェクトに取り込み、最新のバイリンガルファイルの内容をメインの翻訳メモリにインポートする

  1. 受け取った返却パッケージ(.sdlrpx)をWindowsエクスプローラー上でダブルクリックするか、Trados Studioの上部リボンで[ファイル]タブを選択し、[開く] > [パッケージを開く] を選択して返却パッケージを開きます。

    : このとき元々のプロジェクトパッケージの作成元になったプロジェクトが [プロジェクト] ビューの一覧に表示されていないとエラーが表示されます。その場合は、元のプロジェクトを [プロジェクト] ビューに読み込み直してから返却パッケージを再度開いてください。

  2. 返却パッケージの内容を確認して [完了] をクリックします。


  3. 取り込まれたバイリンガルファイルを開いて問題がないことを確認したら、[ファイル] ビューに戻り、メインの翻訳メモリに取り込みたいバイリンガルファイルを選択して(複数のファイルを取り込む場合はCtrlまたはShiftキーを押しながら複数ファイルを選択し)、右クリックメニューから [一括タスク] > [メインの翻訳メモリの更新] を選択します。

  4. 下図のページで原文分節が同じで訳文分節が異なる場合にどう処理するかや、翻訳メモリに取り込む分節のステータスを選択し、[完了] をクリックします(このページのオプションについては詳しくは、「バイリンガルファイルからの翻訳メモリ更新」をご覧ください)。
島田 智紀
制作者

島田 智紀

シニアソリューションコンサルタント
RWSでTrados製品のコンサルティングをしております。
Trados認定トレーナー。
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